相続した実家の売却で3000万円控除!空き家を売った時の特例とはなにか?

query_builder 2024/07/19
コラム
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7月5日の記事でマイホームを売却した際に3000万円が控除できる特例について解説しました。

この特例を「居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除の特例」といいますが、実はこの特例、相続した実家の空き家など、相続不動産に対しても使えるのです!

(空き家特例とも言います。)

相続不動産の場合はマイホームを売却する際と適用要件が異なる部分があるので、相続不動産の場合の適用要件などについて解説していきます。


マイホーム売却の際の3000万円の控除の特例について

「居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除の特例」をおさらい!

まずは簡単に前回記事で解説した「居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合の3000万円控除の特例」をおさらいします。

適用要件は6つあります。


①     自分が住んでいる家屋を売る、または家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
現在住んでいない場合は、居住しなくなった日から3
年目の年末までの売却であること。

②     売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての総益通算及び繰り越し控除の特例の適用を受けていないこと。

③     売った年、その前年および前々年にマイホームの買い替えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。

④     売った家屋や敷地等について、収用などの場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

⑤     災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること。

⑥      売り手と買い手が親族や夫婦、同族会社など特別な関係でないこと。

上記の6つの要件を満たしている場合、特例が適用されます。


あくまでもマイホーム対象とした特例であるため、この特例の適用を受けることだけを目的として入居した家屋や、一時的な目的で入居した家屋、別荘などの娯楽・保養のために所有する家屋については特例の適用を受けることができません。


3000万円控除の特例は相続空き家の譲渡にも適用される!

相続した実家の空き家の売却の3000万円控除の特例とは

相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(※)まで控除することができます。相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(※)まで控除することができます。

これを、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家特例)」といいます。

※控除額については税制改正によって一部変更があるため、「税制改正での特例の変更ポイント」にて詳しく解説します。


譲渡所得の算出方法はマイホーム売却の場合と同様


で求められます。譲渡所得=譲渡価額―取得費―譲渡費用 



税額は上記の方法で求めた「譲渡所得」に税率を乗じることで算出できます。


税額=譲渡所得×税率

税率は所有期間によって異なり、譲渡をする年の1月1日時点において所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得(所得税率30%・住民税率9%)、5年を超える場合は長期譲渡所得(所得税率15%、住民税率5%)が適用されます。


相続で物件を引き継いだ場合、被相続人の所有期間を引き継ぐため、被相続人の所有期間が5年を超えていれば、相続人が相続してすぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用されます。

「被相続人居住用家屋」及び「被相続人居住用家屋の敷地等」とは?対象となる家屋、敷地等の要件について

特例の対象となるのは「被相続人居住用家屋」であり、これは相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋のことを指し、次の要件すべてに当てはまるものをいいます。

● 昭和56年5月31日以前に建築されたこと

● 区分所有建物登記がされている建物(マンション等)でないこと

● 相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

 

昭和56年5月31日以前に建築確認申請を行った建物は「旧耐震基準」を満たす建物であり、現行の「新耐震基準」を満たしていない建物です。


現在、国内では放置空き家の増加が大きな社会問題となっています。

その解決のために国が相続空き家に対してこの特例の適用を認め、相続空き家の譲渡に対して大きな節税効果を与えました。

そのため、対象となるのは古く、倒壊などの危険性の高い旧耐震基準の戸建て住宅を対象としているのです。

マンションは古い建物であったとしても、管理組合によって管理されているため、相続空き家の3000万円控除の適用要件からは外れています。

 

要介護認定を受けて老人ホーム等に入所するなどの理由で、相続開始の直前において被相続人が居住していなかった場合でも、一定要件を満たすときはその家屋は被相続人居住用家屋に該当します。

(従前居住用家屋という。従前居住用家屋の要件は「国税庁No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋に記載されています)

 

特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利を言います。

その土地に母屋と離れなど、2つ以上の建築物がある場合に控除の対象となる範囲は、2つの建物の床面積の合計のうち、土地全体の面積×被相続人が居住用に使用していた家屋(母屋)の床面積の部分のみになります。

[2つ以上の建築物がある場合の被相続人居住用家屋の敷地等の範囲]

(引用)「国税庁HP No.3306被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」より「<事例>被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等の範囲」


特例を受けるための要件

家屋や敷地が特例の対象となることがわかったら、次に確認しなければならないのが、特例の適用要件を満たしているかどうかです。

特例を適用するための要件は以下の通りです。

①    売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。


②    相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。


③    被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと。


④    被相続人居住用家屋は譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。


⑤    相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取り壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。その際、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等は相続の時から取り壊しの時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと。さらに、被相続人居住用家屋の敷地等は取り壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことが無いこと。


⑥    (令和6年1月1日以降に行う譲渡の要件)相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことが無いこと。


⑦    (令和6年1月1日以降に行う譲渡の要件)相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと。


⑧    (令和6年1月1日以降に行う譲渡の要件)相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、被相続人居住用家屋の全部の取り壊し等を行ったこと。


⑨    相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。




⑩    売却代金が1億円以下であること。(※)


⑪    売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収容等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。


⑫    同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。


⑬    親子や夫婦など特別の関係*がある人に対して売ったものでないこと。

*特別の関係=親子・夫婦の他、生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

 

※相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金の合計額が1億円以下の場合に特例の適用が受けられます。

そのため、期間中に残りの部分を自分や他の相続人が売却して、売却代金の合計が1億円を超えた時は、その売却の日から4か月以内に修正申告書の提出と納税が必要になります。


(図)一億円の判定における合算対象の範囲


一億円の判定における合算対象の範囲「国税庁HP No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を参考に作成



手続き・必要書類


特例を適用するには確定申告書に要件を満たしていることを証明できる以下の書類を添付する必要があります。

①    譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]


②    売った資産の登記事項証明書等で

・売った人が被相続人から相続または遺贈により取得したこと

・昭和56年5月31日以前に建築されたこと

・区分所有建物登記がされている建物でないこと(マンション等でないこと)

※「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産にかかる不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載すれば上記の証明書の添付は不要です。


③    売った資産の所在地の管轄の市区町村長から交付された「被相続人居住用家屋等確認書」


④    耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(家屋を取り壊した後にその敷地等を売った場合は不要)


⑤    売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの

※令和6年1月1日以降に譲渡を行う場合で、譲渡した年の翌年2月15日までの間に一定の耐震基準を満たすこととなったまたは被相続人居住用家屋の全部の取り壊しを行った場合は、「被相続人居住用家屋等確認書」にその旨が記載されていること。

適用要件や添付書類については、国税庁から公表されている空き家特例チェックシート」を使って確認することで、該当の不動産が特例の適用対象になるかどうか、適用できる場合何を提出するかを確かめられます。


令和5年度の税制改正による影響

税制改正での特例の変更ポイント

令和5年度に税制の改正があり、税金に関わる様々な制度の内容に変更がありました。

空き家特例において改正されたポイントは以下です。

①    特例の適用期限が「令和9年12月31日まで」に延長された。

②    (家屋を含む譲渡の場合)譲渡日の属する年の翌年2月15日までにその家屋が一定の耐震基準を満たすこととなれば特例が適用できるようになった。

③    (敷地のみの譲渡の場合)譲渡日の属する年の翌年2月15日までに家屋を除却すれば特例が適用できるようになった。

④    相続人が3人以上いる場合1人当たりの特別控除額は2000万円に変更。

 

税制改正前は空き家特例が適用できる期間が平成28年4月1日~令和5年12月31日まででしたが、税制改正により期限が4年延長され、令和9年12月31日までとなりました。

これは空き家問題が未だ解決に至っていないことから、放置空き家の発生の抑制に引き続き取り組むために変更されました。

また、耐震リフォーム・家屋の除却の要件について、改正前は譲渡までに一定の耐震基準を満たしている、または家屋の全部を除却した後に売却しなければなりませんでした。

この要件の場合、譲渡をする相続人自身が耐震リフォームや除却工事をする必要があり、相続人の負担となることから空き家の流通に支障をきたすということで、令和5年の改正により、譲渡日の属する年の翌年2月15日までに、購入者が耐震リフォームや除却を行い、要件を満たせば良いこととなりました。

ここまでは緩和された要件について解説しましたが、相続人が複数いる場合の特別控除額については要件が厳しくなりました。

税制改正前は相続人が複数名いる場合でも控除額はそれぞれ3000万円ずつと定められていました。

しかし、税制改正により相続人が3人以上の場合は、控除額が一人当たり2000万円に引き下げられました。


最後に

売却前に特例が適用できるか確認してみよう!

ここまで空き家特例について解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか?


実家を相続したけれどどうするべきか迷っている方も多くいらっしゃると思います。

そんな方は売却を決める前に一度この特例の適用対象になるかどうかを確かめてみてはいかがでしょうか?

手続きで迷ったり、どうすれば良いかわからないという方、また親族同士の話し合いだけでは解決できない相続問題を抱えている方はぜひ一度グピカにご相談ください!

ご相談は無料なのでお気軽にご予約ください。




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