【スムーズな相続を迎えるために】
不動産を所有している方が亡くなった際には相続に関する多くの手続きが発生します。
実際に手続きをする時に慌てて誤った判断をしないためにも、事前に所有する土地について準備をしておくことが大切です。
今回はスムーズな相続を迎えるために、事前に準備しておきたいことをご紹介します。
相続を迎えるための準備
売却する土地と資産組替え用の土地を選別
相続税の納税資金について、十分な現金を準備できるとは限りません。
相続発生時に慌てて手放すべきではない土地を売ってしまうというような判断を誤らないようにするために、相続する前に土地の取捨選択をしておくと安心です。
具体的には所有している土地を
・残す土地(自宅などの先祖から受け継ぐ土地。収益性が高い土地。)
・売却検討可能な土地(収益性の低い土地。貸し住宅や駐車場)
に分けて、事前に選定しておきましょう。
生前に被相続人の意向も聞きながら、相続人の間で方向性を決めておくことが重要になってきます。
その際に注意をしなくてはいけないのが「収益性の高い不動産は優先的に売却」、「守りたい土地は残すべき土地なのか」という判断です。
その後の相続人の将来的な生活維持をしっかりと考えて上で決定していくことが重要です。
検討の結果、一部を売却して納税資金に充てるという結論が出た場合、土地購入時の契約書の有無が「譲渡所得税」に大きく影響します。
相続した土地を売却した時にかかる「譲渡所得税」は、土地の売却価格が購入価格より高かった場合に発生する税金です。
例えば、土地購入時の売買契約書が残っており、買値が7000万円だったということが明らかな土地を売却したところ、1億円の売値がついたとします。
この場合、3000万円の利益に対して「譲渡所得税」がかかります。
ところが、購入時の売買契約書が残っていない場合は買値がわかりません。
そこで国税庁は「売った価格の5%を取得費として計算する」と定めているため、1億円で売却した場合には95%の9500万円を利益として計算することになります。
売買契約書が残っていないケースは多いため、「譲渡所得税」を考慮に入れつつ、それでも売却するべき土地なのかをよく考えなくてはなりません。
相続税の納税方法
次に準備をしておきたいポイントは納税方法です。
相続税の納税方法は、現金納付、延納、物納と3つあります。
現金が相続財産にある場合や相続人に財産がある場合は基本的に「現金納付」が優先されます。
現金納付が困難な場合は、相続税を分割で支払う「延納」という選択があります。
相続財産のうちに占める不動産の割合によって延納期間は異なってきますが最長で20年です。
ただし、動産が相続財産に含まれる場合は換金できる財産を所有していると見做され、延納の利子税が高くなる点に注意が必要です。
最後に「物納」。
相続を機に貸し住宅を納税に充てたいと考える相続人もいるでしょう。
相続発生前は固定資産税の金額プラスαという低い地代でも、固定資産税分の損がないという点で問題がなかったとしても、
相続が発生すると貸宅地は「更地としての相続税評価額」×(1-借地権割合)」で相続税が計算されるため、相続人への負担がかかります。
借地人が土地を購入する財産がある場合は売却を、そうでなければ物納という形を取ることもできます。
その際には、物納する土地は必ず動産資産のない相続人(現金納付ができない相続人)に引き継がせなければなりません。
生前に孫と養子縁組をして相続人にしておくことで、動産を持たない孫が貸住宅を相続→相続税の支払いが困難である→物納という要件を満たすことができるのです。
登記簿や関連書類の整理と確認
相続発生時には相続登記を行わなければなりません。
相続した際に土地の登記簿を取り寄せてみたら、実はまだ祖父名義の土地であったと判明することがあります。
今まで相続による登記変更が義務化されておらず、費用がかかるために必要がなければ手続きをしなかったケースが数多く存在します。
しかし相続登記がされずに所有者不明の土地が増えることが問題視され、2024年4月から相続登記が義務化することになりました。
相続が発生した場合には、「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」に名義変更登記が必須となり、登記漏れは10万円以下の過料が科せられます。
ここで重要となるのは、所有する土地の確認と不動産にかかわる書類の整理を相続前に被相続人と共に行っておくことです。
また、この罰則は不動産登記法前に相続が発生した土地にも適用されるため、登記簿の確認は早めに行っておくとよいでしょう。
他の相続人と土地評価額の共通認識
相続人が複数いる場合、遺産分割時にそれぞれの相続分に対して不満が出ることがあります。
相続税の計算上、建物であれば固定資産税評価額、土地であれば路線価と明確な価格が出る一方で、実際の売却額とは差が出るケースが往々にしてあるからです。
土地評価の差異を防ぐには、あらかじめ相続人の間で「この土地は路線価をベースにいくらとしよう」等、不動産価格の方向性と共通認識を持っておくことが大切です。
また、多くの土地を持っている相続人は「地積規模の大きな宅地の評価」という評価方法が適用できると考えているかもしれません。
この方法によれば、単純に路線価×地積といった方法で算出した評価額に比べて、約6~8割の評価額に減額することが可能です。
つまり、課税される財産の評価額が下がれば、相続税は累進税率によっているため、税額はさらに下がることになります。
しかし、広い土地を法人と個人に分けて貸している場合には「二つの土地」という相続税評価になってしまうので注意が必要です。
一方で、一つの土地を二つに文筆することで評価減になることもあります。
角地や二方路線地などがそれにあたり、角地には「側方路線影響加算率」、二方路線地には「二方路線影響加算率」という所定の加算率で計算した価格が土地の評価に加算されるからです。
被相続人であれば、本人一人の手続きで文筆を進めることができますが、相続発生後は相続人全員の同意が必要になるため、専門家を交えながら相続人全員が納得できるように考えていく必要があります。
まとめ
スムーズな相続のために準備しておきたいのは遺言書です。
遺言書と聞くと死を連想して嫌悪感を抱いてしまう気持ちもわかります。
しかし、自分の財産処分については、しっかりとした意思を表明しておくことは大切なことです。
残された相続人たちのためにも事前に準備を行っておきましょう。
NEW
-
query_builder 2024/10/14
-
相続した実家の売却で3000万円控除!空き家を売った時の特例とはなにか?
query_builder 2024/07/19 -
マイホームの売却で最高3000万円の控除!?居住用財産の3000万円控除とは?
query_builder 2024/07/05 -
相続手続の進め方のキホンを解説!~相続人と相続分/遺産相続の方法・遺産分割の種類~
query_builder 2024/05/14 -
遺言書には種類がある?遺言書の種類と選び方、作成方法とは?
query_builder 2024/04/24